マーケティング

工務店の商圏分析入門|広告費を集中する市町村の選び方

更新日:2026年11月7日|対象:工務店・住宅会社の経営者、集客責任者

広告を出す市町村を、人口の多さや会社からの距離だけで決めていませんか。工務店の商圏分析は、自社が対応できる地域の中で、どの顧客に、どの商品を届けるかを決める作業です。

結論:広告の集中先は「対応力・需要の手がかり・自社との適合・実績」の順で絞る

まず施工・営業・引き渡し後の対応ができる範囲を確かめます。その中で公的統計と自社の相談・受注記録を照合し、重点地域と検証地域を分けてください。人口が多い地域、問い合わせが安い地域が、必ずしも自社に合うとは限りません。

この記事では、住宅の新築を中心に、無料の公的データから市町村別の判断表を作り、広告費を配分する手順を紹介します。リフォーム・建て替えなどは対象商品ごとに分けて読み替えてください。特定地域の市場規模や受注可能数を算定した記事ではありません。

工務店の商圏は「市町村名」だけでは決まらない

本記事では、商圏を「自社の商品・サービスを継続して提供でき、顧客から選ばれる可能性を検討する地域」と定義します。施工対応地域は提供できる範囲、広告配信地域は情報を届ける設定範囲です。三つを同じものとして扱うと、対応できない相談を集めたり、顧客に選ばれる理由の弱い地域へ予算を広げたりしやすくなります。

距離の基準は、自社の体制から決める

一律に半径何km、車で何分と決めず、現場監督・営業・協力会社・点検担当それぞれの動きから判断します。同じ距離でも、道路、混雑、冬季の移動条件によって負担は変わります。過去の移動時間、追加費用、応援体制を確認し、例外対応の条件まで決めましょう。

来場者の現住所と建築予定地も区別してください。現在は市外に住んでいても、施工対応地域へ家を建てる相談はあり得ます。地域別の集客成果を確認する際は、建築予定地を主軸に、現住所を補助情報として記録すると、広告の入口と受注地域を混同せずに済みます。

同じ地域でも、選ばれる条件は異なる

当社の「260521 OEM企業様向けセミナー」では、同じ地域でも、顧客が求めるデザインや性能によって選択肢となる住宅会社が変わると整理しています。また、誰に何を提供するかを定め、商品、情報発信を順につなぐ考え方を重視しています。

これを商圏分析に当てはめると、「A市を狙う」だけでは不十分です。たとえば「A市で土地探しから検討し、予算と家事のしやすさを両立したい世帯へ、費用の範囲と計画手順を伝える」と、地域・顧客の困りごと・提供内容・必要な情報を一組で置きます。これは説明のための架空例です。

広告の集中先を絞る4つの視点

1 対応力

工事・営業・点検を続けられるか

2 地域の手がかり

世帯構成や住宅着工を確認

3 顧客との適合

商品と知りたい情報が合うか

4 自社の記録

相談・来場・受注までを照合

商圏分析に使う公的データと、分からないこと

公的データは、地域の状況を共通の条件で比べる土台になります。ただし、自社を選ぶ顧客の人数や広告の成果が、そのまま分かるわけではありません。出典、調査年、集計地域、項目の定義を必ず表に残します。

確認すること 主な公的な確認先 判断時の注意
人口・世帯構成と地域内の分布 e-Stat、国勢調査、jSTAT MAP 人口・世帯数を、今すぐ家を建てる世帯数と読み替えない
地域の直近の変化 自治体が公表する人口・世帯の統計 国勢調査と対象・基準日が同じかを確認する
住宅着工の動向 国土交通省「建築動態統計調査」、都道府県等の公表表 住宅総数と利用関係別の内訳を分ける。着工と自社受注は別の指標

jSTAT MAPは、地域差を地図で確かめる入口

総務省統計局のjSTAT MAP案内では、都道府県、市区町村、小地域、メッシュの統計を地図に表示でき、任意の地域の分析結果をレポートとして出力する機能が紹介されています。市町村全体だけでなく、地域内の分布を確認したいときの選択肢です。(機能案内確認:2026年11月7日)

e-Statの統計地理情報システムのお知らせによると、令和7年国勢調査の人口等基本集計は、都道府県・市区町村の提供が2026年10月2日に始まっています。利用できる年次は集計単位・項目によって確認し、市区町村の新しい数値と、小地域の過去の数値を同時点のものとして比較しないでください。

実務では、同じ調査・同じ年次・同じ単位で比較する表を先に作り、直近の自治体データは別列に添えます。個別世帯の収入や購買意向まで地図から推定せず、地域全体の傾向として扱いましょう。

住宅着工は「何が何戸か」を確認する

国土交通省の建築動態統計調査の案内では、住宅着工統計の月次・年計・年度計の結果表が案内されています。市町村別に使える項目を確認し、新築の注文住宅を検討するなら、住宅総数だけで判断せず、利用関係などの内訳も確認します。

地域間では同じ期間・項目を使い、単月だけで結論を出さずに複数年の動きも見ます。着工戸数は自社が獲得できる棟数ではありません。リフォーム需要に、そのまま新築住宅の着工数を当てはめることも避けましょう。

広告の集中先を決める5ステップ

1.施工・営業・点検の対応条件をそろえる

対象商品と担当者を決め、通常対応、条件付き対応、対応外の地域を一覧にします。条件付き対応では、交通費、移動時間、協力会社の体制、引き渡し後の窓口を確認します。対応できない地域を、需要がありそうという理由で広告の重点先にしないことが出発点です。

2.自社の記録を、建築予定地別に集計する

まず直近12か月など対象期間を決め、地域別の新規相談世帯数、来場、商談、受注、見送り理由を整理します。同じ世帯の複数回予約は分け、建築予定地未定は「未定」のまま残してください。契約まで時間がかかる場合は、同じ時期に初回相談した世帯を同じ期間追い、観察途中の相談を失注に数えません。

地図化する場合も、最初は市町村単位の件数で十分です。個人名や詳細住所を入れた顧客台帳を、そのまま外部サービスへ取り込まず、社内の利用条件を確認した集計データから始めます。

3.公的データと、選ばれる理由を重ねる

候補地域ごとに、人口・世帯構成、住宅着工の動向、自社相談の内容を並べます。次に、予定価格帯、土地探しへの対応、商品、説明できる施工事例などを照合します。公的統計は地域の土台、自社の相談記録は自社へ寄せられた声であり、どちらか一方で全体を代表させません。

全国21エリアの住宅メディア運営を通じた当社の実務上の観察では、集客に苦戦する会社に、更新はしていても顧客が知りたい情報を提供できていない、商品戦略がニーズ変化に対応できていない、といった特徴が見られます(2026年11月時点)。業界全体の統計ではありませんが、地域を変える前に情報と商品の適合を点検する視点として活用できます。

4.重点・検証・保留の地域を決める

対応可能で、商品との適合と自社の記録がそろう地域は重点候補にします。需要の手がかりはあるものの記録が不足する地域は、検証候補です。対応体制が整わない、相談内容と提供内容が合わない地域は、保留する理由を明記します。

件数が少ない地域を、低い受注率だけで切り捨てるのは早計です。情報不足、予約先の分かりにくさ、土地条件、観察期間の不足など、どこに確認事項が残るかを分けてください。

5.広告と受け皿を一組で検証する

地域ごとに、誰の何の悩みへ情報を届け、どのページで比較でき、どこへ相談できるかを決めます。配信地域を変えるだけでなく、対応エリア、費用の範囲、相談でできることをページに明示します。短期間に地域・訴求・予約先をすべて変えると変化の理由が追いにくいため、今回確認する要素を先に一つ決めます。

確認日、担当者、予算上限、途中で止める条件も記録します。地域別の新規相談、対応可能な相談、来場、受注と粗利を追い、入口の件数だけで広告を増減させないようにしましょう。

地域別比較表と広告費の配分例

以下は、すべて架空の地域・数値を使った社内検討例です。公的統計や当社の顧客実績ではありません。初回相談後の追跡期間がそろった同じ12か月の世帯を比較し、工事体制と商品適合は別途確認したと仮定します。

比較項目 A市 B町 C市
通常の対応体制 整っている 整っている 追加体制が必要
新規相談世帯 20組 10組 10組
受注世帯 4組 3組 1組
相談からの受注率 20% 30% 10%
確認できた商品との適合 既存の相談内容に合う 合うが記録が少ない 求める条件の確認が不足
次の判断 重点候補 検証候補 体制とニーズ確認まで保留

B町は受注率が高く見えますが、10組という母数では、受注が1組変わるだけで10ポイント動きます。順位だけで予算を全額移す根拠にはせず、相談の内容と継続性を確認します。C市は広告を増やす前に、提供体制の可否を判断します。

たとえば次の検証に使える広告費が30万円なら、A市20万円、B町10万円、C市0円と置く方法があります。これは優先順を説明する仮定の配分で、推奨の固定比率ではありません。実際には、制作費や運用費を含む総費用、採算、必要な相談数、社内の対応余力から上限を決めます。

当社が工務店へ伝えている年間目標売上の2〜4%は、継続販促予算を考える自社推奨の範囲です。業界平均でも、今回の地域別広告費だけの比率でもありません。年間の予算総額を検討したい場合は、工務店の広告費と予算の決め方もご覧ください。

そのまま使える商圏分析シート

最初は候補を数地域に絞り、次の項目を一枚にまとめます。未確認は空欄のままにせず「未確認」と書き、ゼロ件と区別してください。下記は全文をコピーして使える入力欄です。

【地域別の商圏分析】
作成日/担当:
対象商品:
候補地域/集計単位:
施工・営業・点検の対応可否と条件:
確認した公的資料名/URL:
調査年・基準日/取得日/統計項目:
地域の状況から分かること:
統計だけでは分からないこと:
自社記録の対象期間/追跡期間:
建築予定地別の新規相談世帯数:
来場世帯数/受注世帯数/観察途中の世帯数:
見送り理由/予定地未定の件数:
自社の商品が合うと考える根拠:
足りない情報/次に確認すること:
重点・検証・保留の判断と理由:
今回届ける情報/比較ページ/相談先:
広告・制作・運用それぞれの費用上限:
検証する要素/確認日/継続・見直しの条件:

配信前のチェックリスト

  • 対象地域で工事・営業・点検を継続できる
  • 現住所と建築予定地を区別している
  • 比較する統計の年次・地域単位・定義をそろえた
  • 同じ世帯の重複を除き、追跡期間をそろえた
  • 地域の顧客が知りたい情報と、相談先がつながっている
  • 予算上限と確認担当・確認日を決めた

よくある質問

人口が減っている市町村は、広告をやめるべきですか?

人口増減だけでは決めません。対象商品と相談の内容、自社が提供できる条件、地域別の受注・採算を照合します。新築とリフォームを同じ需要として集計せず、判断に足りない情報があれば検証地域として残します。

顧客データが少なくても分析できますか?

できます。まず対応地域、公的データ、実際に受けた相談内容を分けて整理します。少数の受注率を一般化せず、記録の少ない地域は仮説として扱い、予算上限を決めた検証で情報を増やしましょう。

分析した市町村に広告を設定すれば、その地域だけへ確実に届きますか?

商圏の判断と、広告サービスの地域設定は別です。実際の配信範囲や判定方法は利用サービスの仕様を確認し、配信後は相談者の建築予定地と照合します。想定外の地域からの相談に備え、対応地域もページに明示します。

どの頻度で見直せばよいですか?

自社の相談から受注までの期間に合わせて決めます。月次では予算や相談の偏りを確認し、受注評価は追跡期間がそろってから行う、と役割を分けられます。商品、価格、担当体制が変わった際は、以前と同じ前提で比較しないよう記録します。

この記事を発信するミライエカンパニーについて

株式会社MiraieCompany(ミライエカンパニー)は、建築実務の経験を持つ一級建築士が在籍する、住宅業界に特化したWebマーケティング会社です。住宅会社選びのマッチングサービス「イエタッタ」を直営・OEMを通じて全国に展開し、住宅会社向けセミナーの開催や、メーカー・流通店のセミナーでの外部講師活動も行っています。建築とマーケティングの専門性をもとに、住宅会社の情報発信・集客を支援しています。

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自社資料:当社「260521 OEM企業様向けセミナー」p17・18・20・24の、顧客が求める条件に合わせて対象と価値を定め、商品・集客をつなぐ考え方を、地域の判断手順へ整理しました。地域別の比較・予算配分・顧客像は架空例です。資料確認日:2026年11月7日。

自社に合う地域と、情報発信の優先順を整理したい方へ

対応エリア、商品、現在の集客内容をもとに、地域別の見方と運用の進め方をご相談ください。社内でデータ整理・情報共有を進めたい方は、実践DX研修もご確認いただけます。

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